「年間被曝量1mSv」と「年間被曝量20mSv」の違い
表記の二つは、まるで二重の基準が存在するかのように言われることもあります
が(「普通は年間被曝量1mSvが限度なのに、避難者を帰還させる基準が年間被曝
量20mSvなのはおかしい」など)、どちらもICRPが定め、そして両立する基準で
す。
年間被曝量1mSvは、平時における公衆一般の被曝量(内部被曝・外部被曝合算)
であることは異論がありません。
これに対し、年間被曝量20mSvは、災害復旧時における公衆一般の被曝量であっ
て、これを根拠に日本における帰還政策が決定されている
・・ことになっていますが、正確には違います。
ICRPの文言では、
「災害復旧時には、年間被曝線量は1〜20mSv/年であって、そのうちの下方値を
適用する」
とあります。20mSvでは最大値となってしまい、「下方値」に当てはまらないは
ずなのですが、この解釈で通用してしまっています。
同様のことが食品中の放射性物質の基準値にも言えます。
現在の一般食品100Bq/kgの基準値は、本来は放射性セシウム(以下Cs)、放射性
ストロンチウム(以下Sr)、プルトニウム(以下Pu)などを含めたものです。し
かしSrやPuの測定がほとんどされていないこともあり、まるでCsのみの基準値で
あるかのような表記がされていることもあります。
筆者は数値を重んじますが(そのほうが説得力もあるため)、いかなる数値も無
条件で信じ込むわけではありません。特に規制側の数値については、できる限り
原文を参照して自分で確認しています。
(加藤)