一冊の本
「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日」を読みました。
吉田氏はお立場上、東電の記者会見の場に出ることもなく、また闘病生活に入られたこともあり
何も語らず世を去ってしまわれたと思われがちですが、この本の著者は吉田氏に直接インタビュー
しています。ただ、そのインタビューも、三回目が行われる前に吉田氏が脳内出血で倒れたため、
二回のみですが、直の言葉が収録されています。
時系列で書かれているので、当時を思い出しながら読みましたが、やはり何といっても本書266
ページからの、3/15 午前六時過ぎに発生した二号機の損傷により、大量の放射性物質の放出
が始まった日のことは今でもはっきりと覚えています。
ここに詳しく書くことではないので割愛しますが、携帯電話を使ってネットを見続け、事故の規模
が大きくなっていくことで寝込んでしまいました。ひたすら横になってビールを流し込んで、少し
眠る、という日がしばらく続きました。
その間でも現場では、吉田氏以下年嵩の技術者が残って(事務系の職員や若手技術者は、吉田氏
の指示により、二号機損傷直後に退避しています)注水を続け、現在に至っています。
事故が遠い記憶に感じられることのないよう、今後も手許に置き読み返すつもりです。(加藤)